心はホッキョクグマではないホッキョクグマ
2012年 09月 02日
とても有名な話なので、知っている方々はたくさんいると思います。
愛媛県とべ動物園に生まれたメスのホッキョクグマのピース。
母のバリーバが育児放棄したので、飼育係の高市さんに育てられます。
動物園でのホッキョクグマの繁殖は難しく、生まれたとしても育つ例が少ないのです。
そしで、その当時、ホッキョクグマの人工哺育での生存記録は、日本では104日でした。
北極には雑菌が少ないので、ホッキョクグマの赤ちゃんは雑菌に弱いです。
高市さんはピースを雑菌から守るためにあらゆるものを慎重に除菌しました。
また、ホッキョクグマは生まれてから数か月、巣穴で片時も母と離れず暮らします。
高市さんはピースと片時も離れず、仕事が終わるとピースを自分の家に連れて帰ります。
献身的な高市さんの努力により、ピースはすくすくと育ち、人工哺育の記録を伸ばしていきます。
ピースが生後110日になったとき、高市さんは自宅で育てることに限界を感じ、夜、ピースを動物園に残して帰ることにします。
ピースの悲痛な鳴き声。
本来なら、まだ母熊と一緒に寝ている時期です。
1歳過ぎた円山動物園のアイラがおびひろ動物園に移動したときの叫びもかわいそうでしたが、
ピースはもっと幼かったのです。
その後も高市さんの愛を一身に受けてすくすく育つピース。
2歳のころ、高市さんはピースをほかのホッキョクグマと同居させることを考えます。
ピースにほかのホッキョクグマと慣れてもらって、ゆくゆくは母となってほしいと考えていました。
まずは母のバリーバと檻越しに対面です。
バリーバに檻越しに威嚇されて驚くピース。
ピースのストレスを軽減するため、高市さんはピースとスキンシップを欠かしません。
しかし、もはや高市さんよりもはるかに大きくなったピース。
ピースとスキンシップをしているときに、ピースが過って高市さんに怪我をさせてしまうことを恐れて、
ピースが3歳になったとき、動物園は高市さんとピースのスキンシップを禁じます。
その後、ピースは痙攣の発作を起こすようになります。
原因はわからず、ストレスからと推測されます。
高市さんはピースをほかのホッキョクグマと同居させることを断念します。
ピースは放送当時、5歳。再放送時は11歳です。
今は12歳ですね。
旭山動物園前園長の小菅さんがおっしゃっていましたが
哺乳類を人工哺育するとき、どうしてもついて回る問題があります。
ピースも体はホッキョクグマでも、心はホッキョクグマではないのです。
きっと「アタシは高市ピース、高市家の次女」と思っていることでしょう。
どんな時でも高市さんを必死で見つめるピース。
その懸命な瞳に心を打たれます。
でも、ピースはまだ幸福です。
高市さんが生きているのですから。
有名なベルリン動物園の人工哺育ホッキョクグマ、亡きクヌート。
クヌートは2歳の時、育ての親トーマス・デルフラインさんが急死してしまいます。
昨年、クヌートが4歳で急死したとき、
クヌートはトーマス・デルフラインさんのところに行ったのだと思った人もいたことでしょう。
「世界でただひとりホッキョクグマとプロレスをして遊ぶことができる男」という人がいます。
トレーナーのMark Abbot Dumas氏はメスのホッキョクグマAgeeが生後8週間の時から16年間ずっと家族同様に暮らしています。
Dumas氏とAgeeはプロレスをしたり、一緒に寝転んだり、一緒に泳いだりします。
Ageeも心はホッキョクグマではないホッキョクグマのようですが、とても幸せそうです。
by hamhaha | 2012-09-02 10:12 | 動物 | Trackback | Comments(2)
クマ母にはなれなくても愛情をそそいで育てようとする飼育員さんは本当に大変ですね。
人に育てられた子たちも、それなりにいいクマ生をおくってほしいものです。
そうですよね、ララの子育てを見ていると、
本当に人間には無理ですよね。
アイラはちゃんとくまとして育ちましたしね。
だから、その無理を承知で必死でホッキョクグマを育てる飼育係さんは本当に大変ですね。
その愛情がわかるから、ピースは高市さんしか見ていないんですね。
日本には、ピースとアドベンのミライ(なぜか両方メス)が人工哺育で育っています。
世界でも、人工哺育で育っているくまが何頭かいます。
みんないいクマ生を送ってほしいですね。