三浦しをん原作の映画です。
これは見たくて録画しました。
1995年、出版社・玄武書房では、「大渡海」という辞書を作ることとなりました。
見出し語は25万語ほどの中型辞典です。
監修は国語学者の松本朋佑(加藤剛)、編集者は荒木公平(小林薫)と西岡正志(オダギリジョー)。
しかし、荒木は定年を目の前にしていて、定年後は病気の妻の面倒を見るつもりです。
松本に「君以上の編集者はいない」と言われた荒木、「天地神明にかけて代わりの者を連れてきます」と、後継者を探します。
キーワードは「君は右という言葉を説明できるか」です。
言葉で説明するのは難しいですね。
大学院で言語学を学んだという、ちょっと変わった男の馬締光也(松田龍平)は
「西を向いたときの北に当たる方」と答えます。
そうそう、東西南北を使うというのは知っていたのよ、わたくしも。(本当か?)
こうして馬締は天職ともいえる「辞書編集者」となるのです。
馬締は学生時代からずっと古い下宿に住んでいて、その下宿を本で埋め尽くして暮らしていました。
そんなに本が沢山あると、床が抜けないかと心配になります。
人とのコミュニケーションが苦手な馬締ですが、辞書編集には素晴らしい力を発揮します。
馬締の恋や、大渡海の発刊中止の危機、西岡の転属、松本の死を乗り越えて、13年の年月をかけて大渡海は刊行されたのでした。
馬締が恋をしたのは下宿の大家・タケおばあちゃんの孫のかぐや。
馬締は、巻紙に毛筆で達筆な恋文を書いて、西岡に「戦国武将か!」と突っ込みを入れられていました。
馬締の恋は成就し、二人は結婚します。
辞書には興味のない西岡は辞書編集に時には20年以上もかかると聞き、うんざりするような普通の会社員ですが、
コミュニケーション能力は抜群で、フットワークも軽く、アイディアマンです。
そして、次第に辞書の仕事も大切に思うようになります。
契約社員の佐々木は黙々とまじめに仕事をこなしていき、知識も豊富な重要な戦力です。
でも、13年も契約社員のままだったのかしら。
辞書の作り方というのがとても興味深かったです。
まず用例採集カード。
言葉の意味や用例を一つ一つ書いていくカードです。
玄武書房の辞書編集部には用例採集の部屋があって、今まで集めた言葉のカードが100万以上保管してあります。
馬締も用例採集カードを持ち歩くようになり、知らない言葉に出会うと書きこむようになります。
そして見出し語選定。
自社の国語辞典に載っている6万語は全て載せます。
それ以外の言葉が書いてある用例採集カードの言葉を選別します。
広辞苑と大辞林、両方に載っている言葉には丸印、片方に載っている言葉には三角印。
丸印は大渡海に乗る可能性が高く、三角印はそれよりも低い。無印のカードから何を載せるかで大渡海の個性が決まる、ということです。
荒木、西岡、馬締は黙々と印をつける作業をやって行きます。
用例採集カードはあるものは黄ばみ、あるものはまだ白く、長い期間をかけて集めたということがわかります。
契約社員の佐々木は黙々とそれをパソコンで入力していきます。
選別作業をしながら、並行して語釈をつけていきます。
語釈は外部発注もします。(国語学者などに依頼します)
辞書に使う紙も重要です。ぬめり感があって、めくりやすいように工夫をしてもらいます。
もちろん、少しの間違いがないように、何度も校正を重ねます。
辞書というのは、こういう地道な作業でできるのだと思うと、感動的です。
10年も20年もかかるというのはわかります。
完成したときの達成感はきっと計り知れないものでしたでしょう。
最近、辞書をめくることもなくなりました。
パソコンやスマホに内蔵されている辞書を使うからです。
昔は、ただ広辞苑を眺めているのが楽しかったことを思い出しました。
辞書を買いに行こうかと、ちょっと血迷ったことを思ってしまいました。
(買わないわよ、たぶん)
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